「こんなに凄い祭りなのになんでもっと宣伝をしないの?」
だんじりを待つ私の隣で(祭りを)観覧していたご婦人の、私への質問であります。
そう、城崎温泉の秋祭りは、実は凄いんです。
特に10月15日本宮(対して14日は宵宮という)の正午前の宮入りから夕方の一の湯前王橋でのクライマックスまでは特に観ていて面白いと思うのです。
城崎温泉は「まち全体が一軒の旅館」との考えに立って、確かにまちを挙げて一年中なんやかんやとイベントを実施し、お客様に対するPRも欠かしておりません。なのにこの秋祭りだけは以前から情報不足の感は否めないのであります。
なぜ? なぜ? なぜ?
ひとつに、この秋祭りは中途半端な気持ちではできないということがあります。
運営に携わる若者たちはたった2日間の祭りの為の準備を大げさではなく1年をかけてしているのであり、また、私たちのような祭り参加者も2日間べったりと拘束され、それは「日中だけ」といったものではなく1日24時間、つまりは2日間の計48時間祭り漬けとならざるを得ないのであります。
また、15日は町内は完全通行止めとなることはお客様にとってはあまり都合の良い話とは言えず、よって観光商売と祭りは両立し辛いといった誠にネガティブな実情が存在するわけなのです。
けれども、実はそれは微々たること。本当のところは観光客に対して適切に説明できないややこしい事情が存在するからだと私は解釈しております。
つまりは「どんなお祭りか?」ということをお客様に対して具体的に説明ができないのであります。したがってガイドブックも作れない。
祭りの説明は、あいまいな「だんじり祭り」とか「勇壮な祭り」とかでしか表現できないのであります。
城崎温泉を川上から下流に向かって上部(かみぶ)・中部(なかぶ)・下部(しもぶ)と三つの地域に分けるところから祭りの説明は始まるのですが、それぞれの地域で祭りに対する見解が異なることからいきなり挫折してしまうのです。
祭りの説明をするには必ず三つの地域のいずれかを主体にしなければできません。けれどもそれは一方を立てれば一方が立たずといった三すくみの状態となり、三地域が全て納得のできる説明は不可能なのです。そしてそれは三地域の感情的なものだけではなく、具体的用語としても統一できない事情があり、例えばある地域で「引き渡し」という行事は、同じ行事でありながら別の地域からみれば「引き継ぎ」という言葉で表現されるのです。同じ場所において行われる同じ行事の名称が人それぞれによって異なるのですから、それをお客様に伝えるのは至難の業であります。
そしてさらには、同地域内でも人によって祭りに対する見解や美意識は微妙に異なるのです。祭りに教科書やマニュアルはありません。経験と口頭にて伝承されていくのです。城崎温泉に生まれ育ち、長年祭りに携わってきた自分なりの祭りの価値観は、その人固有の価値観であって、似通っていたとしても誰もが共通に共有するものではないのです。城崎温泉の住民ならば恐らくは祭りの語りは誰でもできると思うのですが、10人居れば10人とも違うと思うのです。だいたいは同じであっても、詳細は自分なりの見解が入るのが城崎温泉の秋祭りなのであります。
と、いうことで、この複雑さこそが実は面白みなのであり、250年以上も続いてきた所以なのだと私は思うのですが、結果としてはお客様には説明できない「分かりにくい祭り」になってしまうのであります。
とは言え、冒頭でも申し上げたように、本宮(10月15日)の正午前の宮入りから夕方の一の湯前王橋でのクライマックスまでは、観ていて単純に面白いと思っていただけるはずです。
今年は市長が観に来られていました。初めて観られたようですが、かなりうなっておられました。
来年の10月14日・15日は土日です。
このブログをご覧の皆さまも、是非一度ご観覧いただければきっと喜んでいただけるはずと思う次第です。
《追記》
祭りを語れる人がたくさん居るならば、例えそれが人によって説明が違うとはいえお客様にとってはたいへんに頼りになる祭りの解説だと思うわけです。
私などの現役にとっては祭りの最中にお客様にいちいち説明をしている時間は持てないのですが、既に現役を退いたOBならば聞かれればきっと喜んで自分の「祭り観」を語るはずです。
祭りの最中は、これらOBに祭りの語り部としてたすきなどの目印をつけてもらい、祭り案内人になってもらうのもお客様へのサービスとしてはひとつの案なのかもしれません。
一考の価値有り。
ひらめきました。今度機会があったら、どこかの会議で提案してみることにいたしましょう。
勇壮なお祭りですね。
肩にふとんのようなものをかぶっておられますが、担ぐためのものかな。ということはお神輿?
こちらでも同じころに秋の祭りがありました。4つのやんちゃ坊主もハッピにハチマキで、だんじりを引きました。
だんじりは地車とも呼ばれ、前の綱で引き回しますが、発進はほとんど後についた男衆の力ではないかなと思います。
方向を変えるたびに掛け声をかけて、だんじりのお尻をずらすのは重労働、それでもみんな楽しそうです。