常連のお客様が多くなりますと「もう観るところがない」などとおっしゃられる方もおられるのでありますが、『文学碑めぐり』などをされてみてはいかがかな、と思うのであります。
『文学碑めぐり』と聞くとなんとも地味で苦手な分野だとお思いの方は多いのではないかと思うのでありますが(実は私もそうでありました。こ・れ・ま・で・は・・・)、「歴史と文学のまち 城崎温泉」と言われるだけあって、志賀直哉先生にとどまらず、この地には古来より多くの文人墨客が訪れているのであり、それだけ奥の深いものなのであります。
ただ、単に町内に20数カ所ある文学碑を見て回るだけなのであれば、よほど興味のある人でなければ恐らくそれは全くつまらないもので終わるのだと思います。
この度、城崎温泉観光協会より『城崎文学碑ぶらり散歩』という本が発刊されました。筆者は、城崎温泉で20年以上に渡って文学講座の講師を続けておられる「西村一美」さんであります。
城崎に来遊した志賀直哉、島崎藤村、与謝野晶子、武者小路実篤ら文人墨客たちについての西村さんのレポートは原稿用紙に1千枚余りにもなっているとのことですが、単なる文学論に終わらせるのではなく、文人たちの足跡を訪ね歩いた氏の感慨なども盛り込まれ、我々素人にもたいへんに馴染みやすい、いやいや親しみやすい内容になっているのであります。
この本を1冊持って街歩きをいたしますと、リアル城崎が見えてくると思うのであります。脳裏に旧き良き時代が甦るのでありますが、実はそれがすごく新鮮なのであります。私自身、この体験には大いに驚いているのであります。
この写真の方が西村さん。
1930年 豊岡生まれ。
■定価:450円
■城崎文芸館で販売している他、当館売店にもございます。