平成2年のことでしたが、曜日は今日と同じ土曜日。「役者は親の死に目にあえない」と言いますが、旅館商売とて同じことで、満室で賑わうチェックイン時にお客様を放っておいて臨終に立ち会うわけにも行かず、只々笑顔で玄関に立っていたことを思い出します。
ところが16時過ぎであったと記憶していますが、本来ならば最も忙しい時間帯であるはずなのにお客様の動きがパタリと止まり、促されるままに旅館奥の部屋で寝ている大女将を見舞ったところ、丁度臨終の瞬間であり、大勢の家族に見守られながら旅立って逝ったことを今でも昨日のことのように覚えています。
城崎では、冠婚葬祭は秋祭りの「連中」という同級生のグループが取り仕切ります。大女将の葬儀も「連中」の仲間がたいそう世話をしてくれ、今さらながらに仲間の大切さを感じた時でもありました。
さて、それからわずか数年後。その仲間のひとりが同じ1月13日に亡くなりました。事故死でしたが、若い人の突然の死は本当に悲しいものです。それも仲間の死なのです。しかも彼は新婚でしたからたいへんに辛い思いをいたしました。仲間みんなで泣きました。
ただ、彼の死によって、それ以後の仲間の結束はより強いものになりました。今度の1月15日には彼を偲んだ会が催されます。
今年は暖冬で、今日もほとんど一日中“雨”でしたが、大女将の亡くなった日も、仲間の亡くなった日も、どちらも同じく木枯らし吹く寒い冬日でありました。
今日はふたりを偲びながらも、いつもと変わらぬ笑顔で接遇にあたらせていただいた特別な日でありました。
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