「そう言えば、最近は旅行中に散髪に行くお客様がほとんど居なくなった」と、今日私は床屋で散髪をしてもらっている最中に、ふと思ったのでありました。
宿泊中に床屋に行かれるお客様というのは、以前はけっこうあったと記憶しています。“時代の流れ”とでも言うのでしょうか、床屋に行くほどのゆったりとした旅行というものは、もはや昔話になってしまったのかもしれません(或いは、今時の都会の人は昔ながらの床屋を敬遠されるのかもしれません)。
私は仕事柄ということもありますが、月に一度は必ず散髪をいたします。美容室ではダメ、やっぱり床屋がいい。なぜならば、(顔を)カミソリで剃ってくれることが最高に気持ちいいのであります。
そして、行くのは決まって“あの床屋”、人呼んで『まちのカリスマ美容師』。小学生の頃からの長い長い付き合いであります。
いわば極々一般的な“まちの床屋さん”、しかもご主人は70歳を越えた超ベテランでありますが、何故(なにゆえ)に“カリスマ美容師”と呼ばれるのか?
まずは、行く前には必ず電話予約をしなければなりません(なんのことはない、一人でやっているので電話で確認をしておかないと待たされる時はかなり待たされるだけのことですが…)。
そして、椅子に座るやいなや、あとは全くのお任せ。私は何の注文もいたしません。
良く考えてみれば“気を許せる他人”というものは、この世の中に何人いることでしょう? そうは居ませんよネ。
私はこのご主人には全てを任せられる。したがって、散髪中は熟睡であります。普段の疲れと、髪を触られている心地よさが相まって気分は最高に気持ちよく、只々睡魔が襲ってくるのであります。
例えば大学時代は、都会に住んでいた為に美容室に行っていたこともありました。そこでこれほどまでに気が許せたか? といえば絶対にそうではなく、仕上がっていく鏡に映る自分を終始見ていた筈であります。“気を許せる”というこれほどのリラクゼーションは、そうそう体験できるものではないのであります。
しかも、腕もかなり凄い。
睡魔に襲われた私の頭は、こっくりこっくりと動きが止まらず安定しないにも関わらず、何も無かったかのごとくにハサミは軽快に動くのであります。カミソリだって同じこと。肌を傷つけるようなことは絶対にありません。そして、出来上がりはいつもと同じ髪型。
しかもきっちり1時間なのであります。
こうして私はリフレッシュされ、再び気持ちよく仕事に就けるのでありました。
ありがとう『まちのカリスマ美容師』さん。
ところでこのご主人、床屋以外でもかなりの人。
観光協会の重鎮であり、だんじり太鼓の名手。さらには盆踊り保存会のお世話役で、カラオケも上手。
散髪中、私は寝ていますが、お客様ならば貴重な情報源となってくれるかもしれません。「旅行に散髪」いかがでしょうか?