お客様の服装や持ち物には、流行り廃りがあります。最近の流行りは、伸縮式ハンドルがついた斜めにかたむけて転がすタイプのバッグ。正式には「二輪式ピギータイプ」と言うらしいですが、これを持つお客様が実に多いこと。温泉街を歩くお客様の2組に1組はこのカバンをお持ちではないかと…。
これは大げさではなく本当にそのとおりであって、当館にお越しになるお客様も皆さん使ってらっしゃるのです。
かく言う私もこの一品を持っております。写真の物がそうであります。
「これ、本当に便利いいの?」というのが、ユーザーとしての私の疑問。もちろんどんなものでも長所もあって短所もあるのでしょうが、TPOは考えなければいけないわけで、どなたでもお持ちなことに首を傾げる訳なのです。
それでとあるホームページにたどり着きました。
そのホームページによると、もともとは機内に持ち込みできる大きさ(縦・横・高さの合計115センチ以内。およそ30~40リットル前後)の「スチュワーデスバッグ」ともいわれるものが主流だったけれども、最近急増したのは60~90リットルクラスの大型のもの。そうそう皆さん、最近は荷物がやたらと大きいのです。「旅行の荷物はできるだけ小さく」が鉄則だと思うのですが、これまでは持って行く荷物の量によってカバンの大きさを決めていたのが、ピギータイプの流行によって、先にカバンが決まってそこに荷物を詰めていくから必然的に荷物が大きくなるのではないかと私は勝手に分析するわけなのです(キャスターが付いているので、少々量が多くなっても大丈夫と過信してしまうのではないか?)。
ここでこのホームページの注目すべき点は、実は「容量が大きいものは重くてとりまわしにくい」というところ。これは私も実感しています。さらには、大きいと「ひっぱるとき重さがハンドルを持つ手にもずっしりかかる」とか「空の状態でも、ハンドルのぶん重い」等々。これから冬を迎え着ぶくれしてきますので、とりまわしにくい荷物は余計にいらだつと考えられ…。つまり「二輪式ピギータイプ」は小型のものが適切だということが見えてくるのです。
さて、実はここからが核心部分なのですが、日本は「畳の文化」なのであります。畳の上では靴を脱ぎます。当館でもお客様は玄関で靴を脱ぎスリッパに履き替えます。玄関で靴を脱がず、ロビーも廊下も靴そのままで歩くことができるホテル形式の旅館も多いですが、それでも客室では靴を脱ぎます。
この「二輪式ピギータイプ」という流行り物は、街中を連れ回されてほこりを被り、雨や雪にさらされ、そして泥をいっぱい運び込むのです。「二輪式ピギータイプ」と「畳の文化」とはなかなか馴染めない部分があるのです。
もちろんこの流行り物をご利用のお客様であっても、「畳の文化」に対してご配慮いただく方は多いです。けれども頓着のない方も多いのです。
最近、客室内やロビー、廊下が汚れることが多くなりました。
正直に申し上げると、当館に限らず日本全国の多くの旅館が泣いているのであります。