6月1日から城崎文芸館KINOBUNで、文芸館が新しくなってから4回目となる企画展『「本と温泉」のつくり方。』が始まりました。
私としては個人的な事情もあって、実はこの企画展にとても熱い思い入れを持っています。
「本と温泉」とは城崎温泉の若者が作ったNPOで、「現代版 城の崎にて」を作るべく、超人気作家の万城目学さんや湊かなえさんらに城崎温泉に滞在をしていただいて、城崎を舞台にした小説を書き下ろしてもらうことを目的とした団体のこと。
そして、この団体のユニークなところは、だんだんと出版業界が縮小せざるを得ないこの現代に於いて、「城崎温泉でしか売らない」「城崎温泉に来ないと買えない」という本を制作し、売っているということ。
さらには、そこにはかなりのこだわりがあって、その姿勢に対して意気に感じていただいた超一流の人々の参画がこの本の制作と運営を下支えしているという事実。そしてそして、加えてこのKINOBUNの展示物「生きている本」はあのライゾマティクスさんが手掛けているという驚き。
我々としても「そこまでやっていただいていいのかな」とでも言いたくなるほど、たくさんの皆さまのお陰の中で「本と温泉」は成り立っているのであります。
そもそもこの「本と温泉」は志賀直哉先生来湯100周年記念がそのきっかけ。
いろいろな出来事がその周辺年であったことはたまたまの巡り合わせもあったのだろうとは思いますが、あとあとから考えてみるとこの志賀先生100周年事業のあたりに城崎温泉の大きな転機が間違いなくあったと私は思っています。
おせっかいな人の話も、外国人観光客が増え始めたのも、城崎国際アートセンターが軌道に乗ったのもちょうどこの頃ですし、その機が熟した結果平成30年度は城崎温泉は10軒以上のまちに寄り添った店舗が建築されましたが、そういった大建築ブームも(TOKIWA GARDENもその時創った)、全ては100周年事業のあたりの年からのムーブメントが起点になり、思いが続いているのだと思うのです。
その昔、城崎温泉はたくさんの外部の洗練されたブレーンの助けを借りながら大震災からの復興を見事に果たし、今の「日本の温泉まち」の佇まいがあります。
そんな偉大な先人の志しには十分に配慮しなければなりませんが、今の城崎温泉はその時と同様に、いやその時以上に外部の洗練されたブレーンがどんどんと入り込み研ぎ澄まされていっているように思えてなりません。城崎温泉に住み、そして商売をしている私たちは日々それが楽しく嬉しく、そして受ける刺激に胸高ぶり、城崎温泉に住む喜びを再認識しています。
ただし、忘れてはならないのは、今も昔も、城崎温泉に関わる全ての人が「共存共栄」という思いを理解し、体現しようとしていることです。
今回の企画展はお客様にはもっと気軽にカジュアルに観ていただいたら…とは思っていますが、私としては正当な鑑賞の仕方ではないかもしれませんが、自分が辿ってきた時と重ね合わせて、あらためて振り返ることができる大切な場として、既に何度も足を運んでいるのです。